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2006年09月28日

チャングムが王様にしたマッサージ

目が見えなくなった王様に対して、チャングムが手当てしたマッサージ。
MBCのチャングムの公式ページによると、このマッサージが推拿療法であると書かれており、経絡を刺激することによって病を治療するとあります。

チャングムが、両手の小指球を使って、背骨の両側を上から下へ推法を行う場面があり、ふーん、こんな推法もあるのねえ、と、くいいるように見てしまいました。
王様役の方は、チャングム役のイ・ヨンエさんからマッサージをしてもらえるというので、楽しみだったそうですよ。
画面では数分でしたが、撮影するには、きっと何十分もかかったことでしょう。
チャングムの額の汗は、必然で出てきた汗なんだろうなあと思いましたもの。

推拿(すいな)は、中国医学の三大療法の一つで(他の二つは湯液と鍼灸です)、2000年以上もの歴史があります。
かの『黄帝内経・異法方宜論』には、それぞれの療法が広い中国大陸のどの地方から発生したかが記述されており、推拿は中央から起こったとあります。

中央者、其地平以湿、天地所以生万物也衆。其民食雑而不労。故其病多痿厥寒熱。其治宜導引按蹻。

中央の地域は地形が平坦で湿気が多く、産物は豊富で食物の種類は多く生活も比較的安定している。
この地域では、痿弱・厥逆・寒熱などの疾病が多発する。
治療法としては、導引・按蹻の方法が用いられるべきである。
(参考:現代語訳・黄帝内経素問上)

中国政府は、明の時代より、医療行為としての按摩は推拿と称しているそうです。
按摩なら、何となくわかるという人は多いのではないでしょうか。

導引は太極拳の元となったもの、按蹻は按摩と気功を指しているようです。
そういえば、チャングムにもその名前が出てきた華佗(後漢時代の傑出した医学者)が考案したという気功法、五禽戯は、養生法として有名ですね。

推拿の手法は、振動、摩擦、圧迫、関節の運動などの運動形式により分類されます。
● 擺動類(はいどうるい)−手関節を振り子運動のように動かす
● 擠圧類(さいあつるい)−相対的な一方向の圧力を加える
● 摩擦類−摩擦する
● 振動類−患部を振動させて刺激を与える
● 叩撃類−叩き打つ
● 運動関節類− 関節可動域を拡張させる

これらの中に、手技として、揉法、按法、搓法、推法、拿法、捻法、点法、拍法、弾法、揺法などがあります。
ね、ほとんどの手技には、「てへん」がついているでしょ。

2006年09月18日

肝経湿熱(チャングム)

一昨日のチャングムは、王様のご病気をチャングムが診断し、肝経湿熱としていました。

主治医が肝腎陰虚と診断し、処方薬が甘草瀉心湯なのに対し、チャングムは竜胆瀉肝湯でした。
主治医がつきとめた病名は「狐惑病」。
陰を蝕まれることを「狐」、喉を蝕まれることを「惑」というそうですが、その病気になった原因の見解が主治医とチャングムでは異なっていたのでした。

肝陰が少なくなると相対的に陽が増え、肝陽上亢になりますが、湿熱による実火である肝火上炎とは虚なのか実なのかの大きな違いがあります。
しかし、症状としては非常に似ているために、「弁証」を間違うことがあるんですね。

湿による熱で体を蒸された状態になった王様は失明しそうになりますが、肝経の走行が目にいっていることや、肝の主る竅(体には九つの竅があります。鼻、目、口、耳、二陰)が目であることからのようです。
本には、肝経湿熱が進むと陰器に影響があるように記載されていますが、目に行くとは書いてませんでした。

そして、チャングムの処方した経穴は、
大敦(だいとん)竅陰(きょういん)光明(こうめい)....承泣(しょうきゅう)攅竹(さんちく)睛明(せいめい)
でした。
これらの経穴は、ほとんどが失明を恐れた結果、眼に効くものを選穴しているようです。
ですから、....のところは、他にもあるけれどはしょったよ、ということでしょう。

医務官たちは、承泣、攅竹、睛明が入っているので驚きます。
王様には普段、何かあってはいけないと眼のまわりの経穴は打たなかったようですね。

そしてさらに、チャングムが処方した薬は防已紅参(朝鮮人参を蒸して干したもの)でした。
砒素中毒を解毒するためと、大補元気の人参で気力を取り戻すのが目的のようですが、防已って解毒できるのでしょうか。

2006年08月14日

オケラの根って何だっけ(チャングム)

思い込みで書いたりしないように、調べてから記述しているので、Blogおよびサイトに記載していることを私が覚えていると誤解されませんよう。

意識的に記憶の容量に制限を設けないようにすれば、どんどん入るのではないかとは思っているのですが、加齢には勝てず覚えているはずでも取り出せないことが多い。
地道に繰り返すか、好奇心を全開にして楽しむしかないですね。

一昨日のチャングムは、疫病ではなく食中毒だったということをチャングムがつきとめる、という話でした。
「それでは、処方を変えなければ。
生姜を煎じて、〇〇とオケラの根を...」

生姜は生姜湯にして患者に飲ませ、さらにオケラの根とその他の煎薬を与えていました。
(生姜湯に関してはチャングム公式ページをごらんください。)

オケラ、オケラ...オケラって、生薬は何だっけ?

ああ、情けない。
大量の情報が頭に叩き込まれると、一つ一つの印象の強いものしか残りません。
いわれとか付属の情報が付いていると、ちゃんと覚えてるんですよね。

オケラとは朮(ジュツ)のこと、白朮蒼朮があります。(神農本草経参照。)
皮を剥いたものを白朮、そうでないものを蒼朮といったようですが、市販されているものは、白朮がオオバナオケラ、蒼朮がホソバオケラかシナオケラです。

効能から考えると、朝鮮半島でのオケラは白朮らしいのですが、京都八坂神社で大晦日に行われるオケラ参りのオケラが白朮のことだとは知りませんでした。
厄除けの意味があったんですね。
(生薬の玉手箱参照)

2006年05月11日

華佗(かだ)や扁鵲(へんじゃく)

錦鶏を探しに出かけたチャングムは、帰りに傷を受けたミン・ヂョンホの手当てをしていて、宮中に戻るのが遅れてしまいます。
このとき、ミン・ヂョンホを襲った女は、後に逮捕されますが、そのときに言った女のセリフは、
「確実に急所だった。華陀や扁鵲でも生かすことはできないはず、よくも助けたものだ。」

華佗(かだ)は華佗膏という膏薬に名が残っている中国の名医です。
2世紀の初めに生まれ、長らく民間の医者として名声がありました。
彼は、内科、外科、婦人科、小児科に精通し、中でも麻沸散いう麻酔薬を使い、開腹手術をしたといわれています。
後の魏の王、曹操の頭痛を治し、気に入られて侍医として誘われたのですが、宮仕えを嫌って応じませんでした。
それゆえ、曹操の逆鱗にふれてついには死罪になってしまったのです。

扁鵲は、中国の戦国時代の医者で、医術、技芸とも特別に秀で、秦国のときの太医令、李醓(りけい)が嫉妬のあまり彼の殺害を企てたといわれています。
望・聞・問・切(ぼうぶんもんせつ)の四診に優れ、とくに望診と脈診に関して他の追随を許さなかったそうです。
用いた治療法は多種多様で、湯液(いわゆる漢方の煎じ薬)、鍼灸、按摩、火のし、手術を駆使したとあり、総合療法を行っていました。
(参考:中国医学の歴史)

現代中国の中・西結合の中西医的なお医者様は、古代からいらしたということですね。

2006年03月17日

鋭敏な味覚を失ってしまったチャングム

王子様の麻痺の原因を突き止めるために、自ら王子様の口にしたものを食すことで自分も麻痺してしまったチャングム。
脚の痺れはおさまっても、味覚が鈍感になってしまったのでした。
王様のご膳をお出しするスラッカンの女官の味覚が異常になってしまったのは、一大事です。

王宮の外の医者にもかかりますが、医者が言うには、
「人が味覚を失う場合、大きく分けて原因は二つあります。
一つはよくあることで、風邪や栄養失調、伝染病にかかったりしたことによって味覚が落ちてしまう場合です。
もう一つは中風にかかったり、毒草や薬草を誤って食べてしまって味覚をつかさどる経穴が傷ついてしまう場合で、これを治すのは非常にむずかしいです。」

そして、この話の裏話が次のページに載っていました。

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2006年02月21日

御前競演でのチャングムのマンドゥ

女官になれるかどうかの料理試験。
チャングムは、小麦粉がないので、『スンチェ(白菜)で包んだ餃子』と『夕顔で包んだ餃子』で勝負します。

どこにでもある夕顔と、長番内侍(長官)は言います。
大妃がやって来てそのマンドゥを食べておいしいとおっしゃり、「小麦粉がなければクルリンマンドゥ(小麦粉をまぶしただけのマンドゥ)やオマンドゥ(魚の薄切りで包んだマンドゥ)を作ることもできたのに」と不思議がります。

するとチャングムは、

「御前競演では殿下のための料理を作っておりますが、殿下におかれましては胃腸がお丈夫ではありませぬ。
スンは腸によく、その汁は風邪を予防いたします。
そして、夕顔は胃がもたれる人には、わざわざ食べさせることもございます。
スンは、今はまだ珍しいものですが、種が広まれば朝鮮にすぐに定着する野菜でございますし、夕顔はどの家にもあるものでございます。」

と答えます。
現在の日本では、白菜の方が手に入れることは簡単で、夕顔の方がどこに売っているのかな、といった状況ですが、当時の朝鮮半島では家には夕顔を植えていたのですね。

ユウガオ(瓢箪)は、甘味を持ち凉性で、体の中の熱をさまし水分を補給し、炎症をしずめて利尿効果があります。
白菜も同じような効果があります。
詳細はチャングムが薬草園で見つけた白菜のページでどうぞ。

2006年02月15日

丁子(クローヴ)と鬱金(ターメリック)が食べ合わせが悪い?(チャングム)

先日、薬膳仲間が丁子と鬱金が食べ合わせが悪いなんて、なんでだろう、と言ってました。
クローヴとターメリックってカレーに入っているものですよね。
同時に入れることはないのでしょうか。
いや、入っていたような.....

私も、しっかり「チャングム」の中で、
ハン尚宮が食べ合わせの講義で言っているのを聞いていました。

「豚肉の臭みを消すために丁子をいれるが、鬱金の入っている煎じ薬といっしょに食すと、下痢や嘔吐が起きる」

はたして、そうなのでしょうか?

方剤の中で鬱金と丁香(丁子)を一緒に入れているものがないかどうか調べたところ、見つかりませんでした。
やはり、食べ合わせが本当に悪いのか、見つけ方が悪いのか。
532の方剤の中から調べた結果、

鬱金を含む方剤 黄連黄芩湯 おうれんおうごんとう 胆経の発熱、口渇、口が苦い、脇痛
安宮牛黄丸 あんぐうごおうがん 高熱煩躁、神昏譫語、および卒中昏迷
牛黄清心丸 ごおうせいしんがん 神昏譫語、身熱、煩躁不安
丁香(丁子)を含む方剤 女神散 にょしんさん 肝虚気滞、上熱下寒
丁萸理中湯 ちょうゆりちゅうとう 脾胃虚寒で胃寒嘔吐が強いとき
強中湯 きょうちゅうとう 過食生冷による脾胃不和の腹満、痞満、腹痛
紫雲丹(紫雪丹) しうんたん 高熱煩躁、神昏譫語、痙厥、口渇唇焦、尿赤便閉
蘇合香丸 そごうこうがん 突然昏迷、歯関緊閉
丁香柿蒂湯 ちょうこうしていとう 胃気虚寒
柿蒂湯 していとう 胃寒呃逆不止

で、もともとこれらを含む方剤の数はそう多くはなさそうです。
すべての方剤を網羅しているわけではないので、他にこの二つを組み合わせた方剤がありそうな気もしますが。
どなたか、ご存じの方がいらっしゃったら教えてくださいませ。

鬱金は、ストレスが多くて瘀血がある人に血液をサラサラにする効果があり、
丁香は、お腹を温め、胃の冷えにより起った吐き気やしゃっくりをとめるのに優れています。

2006年02月09日

王女さまが食欲不振(チャングム)

王女さまが全然物を食べなくなり、そのことを危惧した王様が「子供に食べさせることができない親なんて」と、いっしょになって食事を拒否しだしたので、スラッカン(王様の台所)はたいへんです。

チョン最高尚宮「ハン尚宮は山芋粥を炊いてそれに食欲促進の陳皮と砂仁(サイン、しゃにん)白豆蔲(ペクトゥグ、びゃくずく)を入れてみなさい。」

ハン尚宮「おいしいものも召し上がらぬのに、薬剤の入ったものを召し上がるとは思えませんが。」

チョン最高尚宮「ミン尚宮は干し棗を焼いたのと紫蘇の葉を粉にして料理に入れてみなさい」

この時は、水に微かな臭いがあって、若い王女さまはそれのせいでご飯が食べられなくなったというのをチャングムがつきとめるのですが、王様をはじめとする王宮の人々が気にしていないのに対し、王女さまだけが食べられないので、皆が何が原因か頸をひねるのです。
王女さまは、もともと食が細く、食に対しての欲求が少なく、脾胃が丈夫でない虚の状態。
胃気も正常なら下がるはずが、上がり気味なのでしょう。

食欲を出させるために、芳香のある砂仁(生姜科)や白豆蔲(カルダモンの仲間)、ナツメに紫蘇といろいろ考える最高尚宮は、さすがです。
しかし、カルダモンのように味の主張性の強いものを入れて、料理がおかしくならないのかしら。

それと、ナツメは気を補ってくれるけれど、味の点からは積極的にその料理に対する食欲を起こしてくれるのかは疑問です。
酸っぱさのある漬物系のほうが、よいような気がします。

2006年02月07日

チュンジョチョナプタンを食べた王子様が麻痺

王子様が、チュンジョチョナプタン(蟲草全鴨湯)を食べて麻痺してしまい、宮中は大騒ぎ。

チュンジョチョナプタン(冬虫夏草入り鴨の水炊きと訳されてました)の材料を確認するチャングム。
鴨、冬虫夏草、生姜、胡椒、塩、丁子、肉桂、草豆蔲(チョドゥグ)、朝鮮人参。

材料 五味 四性 効能
甘、鹹 滋陰養胃、利水消腫、健脾補虚
冬虫夏草 益腎補肺、止血化痰
生姜 微温 発表解表、温中止嘔、温肺止咳
胡椒 温中止痛
清火、涼血、解毒、涌吐
丁子 温中降逆、温腎助陽
肉桂 辛、甘 補火助陽、散寒止痛、温痛経脈
草豆蔲 健脾燥湿、散寒、温胃止嘔
朝鮮人参 甘、微苦 微温 大補元気、補脾益肺、生津止渇、安神益智

滋養効果がある材料が、ズラリと並んでいます。

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2006年02月01日

「チャングム」ミン尚宮が内人たちに金針菜の講義

ハン尚宮とチェ尚宮の料理の競い合いの最中でも、スラッカンでは教育が続いています。
ミン尚宮が内人たちに何やら説明しています。

「これは、ヤブカンゾウの花を乾燥させたもので、フォンファまたはファンファというのよ。
このフォンファを使ってチャプチェ(油炒めにした肉、野菜、春雨の和え物)を作ると、酸味があってたいへんおいしい。
どこに良いかというと....」

ここで詰まってしまったミン尚宮の後を引き継いで、通りかかったハン尚宮が皆に説明します。
「五臓六腑をいやすことにより身体が軽くなるし、特に目があかるくなる。
また、ヤブカンゾウの花は炊き込みご飯にしたり、汁の実にもする。」

そして、最高尚宮は王様に、この料理をお出しするときに、
「殿下におかれましては、毎晩遅くまで本をお読みになっているせいか、目がかすむとのことですので、ファンファチェをご用意いたしました。」と解説します。

金針菜は、黄花菜ともいい、ここで説明されているファンファのことです。
新鮮なものは、中華街の八百屋とかでよく見かけますが、短いインゲンのように緑色で、独特のシャキシャキ感が炒めものに大変合います。

乾燥品は黄色がかったオレンジ色のものと茶色のものがあり、オレンジの方は素干しで、茶色の方は蒸してから干しているようです。
オレンジの方は色がとてもきれいなので、お茶の中に入れてもよさそうです。
まだ試していませんが、そのうち試してみますね。

金針菜は、甘味を持ち凉性で、肝と腎に対しての働きがよろしく、血を増やし、解毒、利尿効果があります。
私は炒めものやスープで使ったことはありますが、ハン尚宮のいうとおり、今度炊き込みご飯にしてみようと思います。

2006年01月31日

トックおじさんが売り込んでいた天神純気丸

ドラマ「チャングム」の中で、トックおじさんが、兵士たちに一生懸命売り込んでいた偽の天神純気丸。

十尋の高さの滝を遡るという、竜になった鯉の胆嚢
破裂することはあっても、曲がることは絶対にない精力の化身、まむし
寒い冬を耐え抜いて大輪の花を咲かせるという椿の粉
満月の夜に休まず交尾をし続けるというオットセイの生殖器
朝鮮に代々伝わる神秘の名薬、紅参(ホンサム)の粉
これらすべての薬剤を覆盆子(ポクプンジャ)、枸杞子(クギジャ)、莵絲子(トサジャ)と合わせて、糖蜜をまぶして丸薬にする。

という、うたい文句でしたが、

その実、龍になった鯉ではなくただの鯉、オットセイではなくカエルの下半身を干したもの、マムシの粉ではなく大豆の粉、それに甘草(カムチョ)、陳皮、五味子(オミジャ)を加えて水飴で丸めたもの、でした。

精力がつくというので、兵士たちは群がっていたのですが....
甘草、陳皮、五味子が入っているのなら、精神を安定させ気を増やして巡らせる効果もあるでしょうが、とても精力のつくという内容ではありません。

『精』は生命エネルギーの根本をなすもので、腎が貯蔵すると考えられており、『気』の元であり、生殖のためのエネルギーでもあります。
以臓補臓(たとえば、肝が悪ければ動物のレバーを、関節が悪ければ動物の骨髄の部分を食べることによって不足しているものを補う)の考え方からすれば、龍になった鯉がいればその胆嚢、そしてオットセイの生殖器を食すということは足りないものを補うことになるのです。
胆は、中国の古典黄帝内経では「中正之官、決断出ず」とたとえています。
中立の立場で他の臓腑を見て、臓腑活動の行動を決断するので、落ち着きはらって大胆な者を豪胆とかいったりしますよね。(ちなみに、肝は『将軍の官』です。)

紅参は高麗人参を蒸してから乾燥させたもの、覆盆子(ふくぼんし)、莵絲子(としし)は腎陰を補うのでインポテンツに、枸杞子(くこし)も肝腎を補い遺精の改善に役立ちますので、トックおじさんのキャッチフレーズどおりなら、恐ろしく精力絶倫になる処方だったわけです。

「天神純気丸」て、この名前で本当にあるのでしょうか。

2006年01月20日

薬草園でのキバナオウギ

薬草園でチャングムはキバナオウギを育てようとします。
それに対し、そこで働いていたパジがキバナオウギを説明します。
「キバナオウギというのは上・中・下焦、また体の外と内すべてに良いから...
どんな漢方薬にも使われる薬剤なんですよ。昔、苦参をキバナオウギと間違えて煎じ薬に入れてたんです。
でも先代王朝時代、明国を訪れた使者が、苦参はキバナオウギとは違うというもんで...」

黄耆(おうぎ)も苦参(くじん)もマメ科なので、似ていて間違えるんですね。
しかし、黄耆が高麗人参に匹敵するくらい気を補うものとして有名なのに対して、苦参は別名クララ、湿熱による黄疸や下痢に使われるものです。
便秘の人や冷え性の人が飲んだら、さらに具合が悪くなっただろうと想像しちゃいます。

上・中・下焦というのは、肺や心臓(上焦)、脾胃(中焦)、肝、腎(下焦)と、五臓のすべてによいという意味ですが、選択的に働く帰経は脾経と肺経ということになっています。
外にも内にもよいというのは、体表のむやみな汗を止め、利水効果もあることをいっているのかな。

黄耆の煎じた汁は、まずくはありません。
味噌汁などのスープ系にだしをとるときに一緒に入れると、味に深みが出ておいしくなります。
なつめ茶なども単味だとあまりおいしくないと思えても、黄耆を加えるとおいしくなっちゃうので不思議です。

2006年01月19日

チャングムが薬草園で見つけた白菜

無断で宮廷の外に出てしまった結果、薬草園勤務という閑職に追いやられてしまったチャングム。
薬草園にいる者たちは、皆、やる気がなくゴロゴロしています。
あまりに、やる気のないウンベクを見て、

「そこの雑草抜きなさい!」

というチャングムに対し、薬草を抜いてしまうウンベク。

チャングム「これは柴胡(シホ、さいこ)よ。これは何首烏(ハスオ、かしゅう)、これは石蒜(ソクサン、彼岸花)、そしてこれは...」

ウンベク「それは、某(スン、白菜)だ。内火上汁(ネファサンジュブ、内蔵に熱がこもる)によく効くんだ。頭をすっきりさせ、便秘にもいい。特に二日酔いの喉の乾きをいやすには最高だ。」

16世紀のこの時代、白菜は薬草だったんですね。
日頃、宅配で白菜が来ると、けっこうジャケンにしているので、反省。。。
毎週、大物野菜が来ると、冷蔵庫が満杯で、つい、野菜をたくさん食すために頼んでいるのを忘れてしまいます。

白菜が体にどのような効き目があるのかを最初に書物に書き表したのは「忽思慧」で、『飲膳正要』に載っています。
飲膳正要は、薬ではなく、初めて日常的な食物のはたらきを記載した書物で、薬膳の原典といわれています。
この飲膳正要の中には、肉といったらやたらと羊肉が出て来るので、私も友だちも不思議に思っていました。
授業のときに、先生から 『元』 の時代のもの、といわれた瞬間、ハッと気づいたんです。
元といったらモンゴル、ジンギスカーンの時代のこと、羊を日常的に食べていたはずです。

その飲膳正要によると、

白菜の五味は甘で、四気は平、
胃・腸・肝・腎・膀胱に帰経(選択的にこれらの経絡に働くということです)し、清熱除煩、通利腸胃、利尿

の働きがあると書かれています。
イライラして体に熱がこもっている者の熱を冷まし、胃腸の調子を調え、利尿効果があるということですね。
現代人にとっては、積極的に摂った方がよい野菜といえるかもしれません。

2006年01月18日

チャングムが切っていた緑豆寒天

ハン尚宮「なんと。。。こんな不揃いなものを殿下にお出しするつもり?見た目もそうだけど、これでは味にむらができてしまう。」

この後、ハン尚宮はムクの両側に箸を置き、箸の上に包丁をすべらせて、均一に切り、チャングムにお手本をみせてくれます。

チャングムが切っていたムクとは、ドングリや蕎麦、緑豆などの粉をゼリー状に固めたものだそうですが、ドラマでは『タンピョンチェ』という緑豆寒天と野菜の和え物になります。
タンピョン(蕩平)とは偏りがなく平等という意味だそうですが、タンピョンチェの季節は春で、青、赤、黄、白、黒の五色の食材がすべて揃い、味や食感に偏りがないという意味が込められているそうです。
材料は、緑豆寒天、牛肉、芹、緑豆もやし、卵、糸唐辛子、海苔で五色を彩ります。

五色の材料を煮て串で刺した山海の幸の串焼きや、五色の野菜とともにいただくニベの煮物など、宮廷料理には五という数字がよく出てきます。
『コミョン』という料理の仕上げの装飾に使われる食材も、陰陽五行の考えから、青(緑)、赤、黄、白、黒の五色の食材を使うことが基本とされているそうです。(例:玉子焼き白身と黄身を分けて焼く、銀杏、胡桃、ナツメ、松の実、糸唐辛子など。)
宮廷菓子も、松の実、生姜、ナツメなど体に良い食材を使い、五味五色が取り入れられているそうです。

緑豆寒天は、中国料理でも使われています。
緑豆に水を合わせミキサーにかけたものを、流し箱に薄く注いでそれを湯に乗せ、しばらくしてから湯に沈めます。
葛切りと同じ作り方ですね。

このペラッとしたものを細切りにして、胡麻和えなどにします。
こちらは最初から薄いので、ムクのようにスライスする必要はありませんが、何枚も作らなければなりません。
作りたてでないと水分が出てきて味がうすくなり、おいしくありません。

2006年01月12日

チャングムが当てた熟柿

最高尚宮が、チュクスンチェ(タケノコの和え物)の中に何が入っているか、皆に聞きます。
皆が答られなかった甘味を、チャングムが「塾柿」と見事に当てたシーン。

絶対味覚というのは、いろいろな食べものを食べてこそ培われるものだそうですので、小さなチャングムが絶対味覚を持っているというのはおかしいのですが、ドラマはこのほうが盛り上がりますね。

最高尚宮 「熟柿は季節の変わり目には風邪の予防にもなるうえ、二日酔いにも効く。殿下は昨夜お酒を嗜まれたゆえ、少し入れてみたのだが、あの子が当てたわ。」

ドラマでは熟した柿と訳されていましたが、韓国では熟柿(ホンシ)として秋から冬にかけて市場に一般的に出回るポピュラーなものだそうです。
口に入れるとねっとりとして、完熟メロンに近い舌触りとかで、そのままや料理にも使うけれど、本来の宮廷料理では果物を甘味として砂糖の代わりに使うことはないそうです。

柿は甘味と渋味を持ち、寒で、体を冷やしますが、潤いをもたらし、咳を止め痰をとり、下痢を止める働きがあります。
しかし、沢山食べると歯を損ねる、と書かれています。
老人や冷え性の方は、夜に食べると体が冷えて、トイレに起きてしまうようなこともありますので、朝や昼間にいただくようにしましょう。

2006年01月05日

チャングムが受けた蜂針

大紀元という中国の報道サイトによると、

http://www.epochtimes.jp/jp/2005/11/html/d80597.html

このようなニュース系のサイトの場合、ページは刻々と変化していくので、このページがずっとある保証はありません。
それで、重要なところだけ引用します。

蜂を利用した治療法はかなり古い時代からありました。なぜ蜂のハリで身体を刺すと治療効果を得られるのでしょうか。実は蜜蜂が人を刺す時に人体内に注入する0.03〜0.05mlの蜂毒が、鍼、灸、薬の作用を果たすのです。

 1. 蜂のハリでツボを刺すと、身体の中を走る経絡が刺激され、気血の流れを改善するという鍼の効果が得られます。
 2. 蜂の毒を体内に注入すると、止痛消腫という薬用効果が得られます。
 3. 蜂のハリで刺した後、局部は赤く腫れ上がり、皮膚温度も高くなるというお灸の反応が現れます。これによって経絡を温め、抵抗力を増強するという効果が得られます。
 現在、蜂の毒の研究では、中に20数種類の生物活性を含むポリペプチドが含まれていることがわかりました。これらの物質は副腎皮質ホルモンの分泌促進、免疫調節機能の増強といった作用があるので、免疫力の向上、新陳代謝の促進、炎症の抑制、痛みの緩和、血液粘着度の降下、血管拡張、癌細胞成長の制圧、腫瘍転移の防止などに効果があります。
 臨床実験では、蜂の毒は関節リューマチ、神経根炎、糖尿病の神経障害、糖尿病の血管障害、変形性頚椎や腰椎関節症などに対して、目覚しい治療効果を得ています。

ウンペクがチャングムに蜂の鍼をうつ前に、精神を落ち着かせるためといって、内関穴(心包経)と曲池穴(大腸経)に鍼をうちますが、二穴とも自律神経に働きかける効果があるようです。
精神安定のためなら神門(心経)あたりのほうが良いような気もしますが、よくはわかりません。
蜂毒は、アレルギーを起こしてショック症状を起こす人もいるので、ウンペクはチャングムに蜂の鍼をうつことをためらっていたのですが、結局、チャングムの舌の痺れはとれましたね。
生きている蜂ではなく、針部分だけを取って使ったことも毒性を和らげているのではないでしょうか。
実際には舌に直接鍼をうつことはなく、ドラマを盛り上げる都合上、そうしたということです。

www.chikai.jp/medical/bbs.asp?pg=14&rep=7 参照

2006年01月03日

チャングムの誓いMBC公式ページ

チャングムの誓いのMBCの公式ページを見つけました。
今までチャングム関係ではずいぶん検索していたのに、どうして見つけられなかったのかな。

日本語のページで、チャングムに出てくる漢医学情報を現在、医学諮問している韓国の東国大学付属漢方病院から直接お伝えとありますので、ブレーン自ら詳しく教えてくださるということですね。
以下、そのURLです。
ずっと、存在するページかどうかはわかりませんが、当分楽しめるのではないでしょうか。

www.chikai.jp/medical/bbs.asp

ただし、会員にならないと詳しい情報は読むことができません。
でも、漢方情報は無料の会員になればちゃんと『続き』を読むことができますよ。

王が王族などに出す「賜薬」は、体力あるものにはときどき利かなかったとか、「孤惑病」の説明は口中が爛れるのが「惑」であり、陰部が爛れるのが「孤」であるとか、非常にためになるおもしろい知識が手に入ります。
う〜む、良いサイトだな。

2005年12月30日

チャングムが教えられた食物の鹹(塩辛い)という味

チャングムが醤油や塩、塩辛などを味見している場面で、
ハン尚宮の声「この他にも豆に栗、豚肉、ナマコ、ワカメ、それに西瓜にも塩味が含まれているのよ。だから味付けする時は気をつけなさい。料理が冷たいほど塩味を強く感じるの。」

このセリフを聞いたときは、五行の水に属する鹹(塩辛い)の性質がある食品なのかと思いました。

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2005年12月28日

チャングムに出てくる床ずれの話

チャングムの中で、最高尚宮がチェ内人にチェ一族の話をするところがあります。
五代前のチェ・マリ尚宮が、状勢を察知し新勢力に加担するために、床ずれに苦しむ文宗大王に豚肉をずっとお出しし、そして最高尚宮になった、というのです。
これに対し、チェ内人は「床ずれにはお肉は御法度のはずです。」と言います。

床ずれに豚肉?
一瞬、何のこっちゃという感じですが、これを考えてみます。

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2005年12月25日

チャングムに出てくる牛乳粥とカンナン

ミン内人「今夜のお夜食はあの貴重なタラクチュク(牛乳粥)ではありませんか」

退膳間(トェソンカン)に忍び入ったチャングムとヨンセンは、大事な王様の夜食をひっくり返してしまいました。

急遽、ハン尚宮はミン内人に命じて、残っている食材を調達させますが、蓮根と生姜しかありませんでした。
そこで、ハン尚宮が作った夜食は、ヨングンウンイ(蓮根の澱粉で作った重湯)とカンナン(生姜をみじん切りにし、砂糖と蜂蜜で煮て、生姜澱粉でまとめ、松の実の粉をふりかけたもの)でした。

それに対して、提調尚宮(チェジョサングン)から、「王様の気力が衰えているご様子なので、内医院(ネイウォン)からタラッチュクを作るように言われたんだろう?」と非難されてしまいます。

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2005年12月24日

チャングムは百日間山菜を取ってきた

幼いチャングムにハン尚宮は、百日間山菜を取ってくる訓練をさせます。
その中でハン尚宮は次のように言っています。

「芹の独特な香りは食欲を促すうえ、胃を丈夫にするの。また毒消しの働きもあるから、ふぐ料理に芹を入れるのはそのためよ。これは三つ葉ね、これは香りが独特で塩を少なめにしてもおいしく食べられるの。だから消渇(ソガル、糖尿病)患者にはとてもいいのよ。これはクサノオウ(白屈菜)よ。絶対食べてはいけないものです。」


芹の性味は、甘、辛、凉で清熱利尿、止血、止帯の作用があり、三つ葉は甘、微凉で散瘀(滞ったものを散らす)の作用があります。
三つ葉が糖尿病患者にいいというのはここで知りましたが、確かに消渇という名前がついているように喉の渇きを訴える症状がある病ですし、塩が少なくても食べられる食物は適していると思います。

ちなみに、糖尿病患者に良い食品は、
とうもろこし、えんどう豆、緑豆、アロエベラ、セリ、山芋、椎茸、舞茸、西瓜、フナ、なまこ、天花粉(シナカラスウリの根)、 枸杞の実および根、地黄(ジオウの根)、天門冬(クサスギカズラの根)、五味子(チョウセンゴミシの実)、烏梅(未成熟の梅の実を燻蒸したもの)、葛根知母(ハナスゲの根)、高麗人参莵絲子(ネナシカズラなどの根)、黄精(ナルコユリなどの根)、黄耆(チャングムの中にも出てきたキバナオウギ)、
といわれています。

2005年12月23日

チャングムがヨンセンに手当てした止血薬

幼いチャングムとヨンセンが退膳間に潜り込み、チャングムの母の料理日誌を探し回ったとき、ハン尚宮とミン内人に見つかり、ヨンセンは腕に怪我をしてしまいます。
蔵に閉じ込められてしまったチャングムが、ヨンセンに手当したのが、トモエグサとキンミズヒキでした。
ハン尚宮の「お前が見つけて貼ったの?」という問いに、チャングムは「はい、血がとまらなかったので...。」と答えます。

トモエグサはオトギリソウ科の植物で、黄色のビヨウヤナギに似た花が咲き、花弁の先が少しねじれています。
手持ちの本の中には載っていませんでしたが、止血や頭痛に使うようです。
キンミズヒキは仙鶴草、竜牙草、脱力草ともいわれ、バラ科の植物、収斂止血、補虚強壮の作用があります。

蔵の中に松ヤニはなかったんでしょうか。あ、蔵はきっと食品倉庫ですね。

2005年12月21日

チャングムに使われている毒薬

昨年、BSで放送されていた『チャングムの誓い』が、秋から地上波で始まりました。
家はBSが見れないのですが、ありがたい親切な友だちがDVDに録画してくれて、それを楽しみに見ていました。

ですから、ストーリーは全部知っているのですが、チャングムだけは何回見てもおもしろい。
夫曰く、「君が2回もドラマを見るなんて、めずらしいね」。

そうなんです。
チャングムは、初めて見た第1回目のときから、このなかに登場する中医学関係のことばにぐっと引き寄せられました。
自分が中医学を勉強しているせいですが、非常にためになるドラマといえます。
中医学を勉強していたり、それを職業になさっている方は、皆興味深くチャングムを見ていることでしょう。

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