苓桂朮甘湯と苓姜朮甘湯
桂枝か乾姜を使うかの差で主治が変わる、方剤っておもしろいけれどよくわからない、でも弁証が合っていれば、たちどころに症状がとれていくので感激することしきりです。
苓姜朮甘湯を飲み始めて1週間、まだふくらはぎの冷たいしこったような感覚と、足裏のスースー感はとれたとはいえませんが、かなり温かみと柔らかさが戻ってきたような気がします。
さて、苓桂朮甘湯と苓姜朮甘湯と両方持ってるんだけど、どっちがいいの?と友だちに聞かれてしまいました。
はて、両方お持ちとはどういう所以でしょうか。
まあ、そのへんの憶測は置いておいて、つくづく双方を眺めてみました。
苓桂朮甘湯 | 苓姜朮甘湯 | |
主治 | 胸脇部が脹る、咳嗽、呼吸促迫、めまい、動悸、舌苔白滑、脈弦滑など | 身体がだるい、腰や下肢が冷えて痛む、口渇はない、食欲は正常、排尿は正常、舌苔は白滑、脈は沈 |
病機 | 脾陽不足で水飲が心下に停聚した状態。 | 寒冷や多湿環境のために寒湿が侵襲し、肌肉に停積した状態。 |
方意 | 主薬は茯苓で、温陽化気の桂枝の補助のもとに、水飲を温化し利小便によって除去する。 | 辛熱の乾姜は温中散寒に働く。健脾除湿の白朮・茯苓は運化を強めて利水し、乾姜とともに寒湿を除去する。 |
金匱要略 | それ短気し微飲あるは、まさに小便よりこれを去るべし。心下に痰飲あり、胸脇支満し目眩するは、苓桂朮甘湯これを主り。 | 腰以下冷痛し、腰重きこと五千銭を帯びるがごとし、甘姜苓朮湯これを主る。 |
説明 | 脾陽虚のために水湿の運化が不足し、湿が集まって水飲を生じる。水飲が心下に集まり停滞し、胸脇部の気機を阻害すると胸脇部が脹り、肺を阻害すると息切れや咳を生じ、心を阻害すると動悸、清陽の上昇を阻害するとふらつきや目眩が現れる。 | 脾は肌肉を主り水湿の運化を主るので、肌肉の寒湿は温中散寒を通じて除去するのがよい。一般的な寒湿の病変では、脾陽が阻害されるので食欲不振や下痢になったり、津液散布が阻害されるので口渇するが水分はほしくなかったり、腎の気化がうまくいかないので排尿がうまくいかなかったりするが、これらの症状がないのは水湿が肌肉にあることを示している。 |
『中医臨床のための方剤学』参考
双方の方剤とも健脾利湿し、体を温めて体内の寒湿を取り除くのは同じですが、一番具合の悪いところがどこなのかを考えて選ぶ必要あり、ですね。