草根木皮みな薬
 

薬膳や中医学を勉強している方、
知りたい方に送る薬膳や中医学情報

薬膳とは、

食卓のバラ 中医学理論に基づき調理された料理で、病気の予防や回復、保健を目的にした、おいしい食事のことです。
薬膳料理は、生薬を使ったものだけではなく、日々の私たちが食べている穀物や野菜、肉、魚、乳製品などを材料にしたものも含まれます。
生薬を使っていれば薬膳だということは感覚的にわかっても、普通の食材を使って作る料理が薬膳なのだということは、いささかピンとこないのではないでしょうか。

かくいう私も、薬膳料理の本を購入しても、生薬配合の料理だとありがたみがあっても、普通の食材を組み合わせた料理が薬膳だといわれても、普通と薬膳の違いがどこにあるのかわかりませんでした。

そうなんです。ここが肝心なところ。
中医学理論に基づいているか否かが、薬膳か否かの大きな違いです。
したがって、生薬を配した料理があっても、それが中医学理論に基づいていなければ、薬膳とはいえません。
枸杞やナツメを使っているから薬膳料理だ、とはいえないということです。

そして、おいしくなければいけません。
おいしくなければ、毎日食べることはできませんし、『おいしい』と思う情報が脳に感知されると、胃の消化液もスムーズに出てきて消化され、体にとって栄養になります。
怒りながらや、イライラしながら食べると消化不良を起こしたりしますから。

では、中医学とは何か

中国伝統医学のことです。
春秋戦国時代に書きあらわされたとされる最古の医学書である『黄帝内経(こうていだいけい)』を基盤として積み重ねられてきた経験医学です。
鍼灸や按摩、易、薬膳も、みなこの理論を基にしています。
先人たちが体験してきた教えを使って、大いに健康に役立てようと思いませんか。

黄帝内経は、天と地の間に人は存在し、自然という環境の中で暮らしているのだから、いかに自然と調和するかということが大事なのだ、と説いています。
そして、何千年も前(紀元前です)に書かれた書物の中で、黄帝は御殿医に問いかけます。
「昔の人は百歳まで丈夫で長生きしたというが、今の者はそうはいかないが、いったいどういうわけか。」
まるで、現代の書物を読んでいるような錯覚を覚える文章です。
昔の人も今の人も、健康に関する意識は全く変わりがないし、健康で長生きする人は養生法に沿った生き方をしているということです。

黄帝内経における季節の養生法は、

立春より立夏までの三か月は、万物が古きを推し出し、新しきを出す。
天地の生気が生じて、もの皆すべて生き生きと栄える。
人は夜寝て朝早く起き、庭に出て歩き、髪をときほぐし、体をゆったりとさせ、心持ちは生気を充満させ、生まれたばかりの万物と同じようにする。
ひたすら生長にまかせ殺してはならない。
生長に対し助けとなるべきで、奪ってはならない。
心を励まし、体をしいたげてはならない。
これが春の気に適応する養生の道である。
これに逆らうと、肝を傷り、夏になって寒病を患い、夏の気に適応しなくなる。
夏の三か月は、万物が繁り栄えて美しい。
天地の気は交わり、万物は花咲き実る。
人は夜寝て朝早く起き、日を厭うことなかれ。
怒ったりせず、花が満開になるように、体内の陽気を外に発散できるようにする。
これが夏に適応する養長の道である。
これに逆らうと心を傷り、秋に瘧(おこり、間歇熱)になり、秋の収気に適応できず、冬になると再び病む。
秋の三か月は収穫の時期である。天気は涼しく風の音は急で、地気は清粛としている。
人は早く寝て、朝早く起き、鶏とともに活動すべきである。
心を安らかにし、収斂する秋の気を緩和させる。神気を収斂し、秋の気を平らかにし、心を外に働かせず、肺気を清浄にしなければならない。
これが秋の気に適応する養収の道である。これに逆らうと、肺を傷り、冬になって下痢し、冬の閉蔵する能力を減少させる。
冬の三か月は閉蔵という。
水は凍り、地面は裂ける。陽気を乱すことなかれ。
人は早く寝て遅く起き、日が出るのを待ち、心を伏せて隠すかのように安静にさせる。
話しにくい私情が自分にあるかのごとく。
寒を避け、温かくし、皮膚から汗して、閉じこめている気を奪われてはいけない。
これが冬の気に適応する養蔵の道である。
これに逆らうと、腎を傷り、春に手足が軟弱に冷たくなり、春の生気に適応する能力を減少させる。

これらは、『四季調神大論篇』に載っている四季それぞれの養生法です。
人が、季節ごとの自然界の気に調和して生きることの重要性を語っていますが、まるで哲学書を読んでいるようです。
春と夏は、夜臥早起、秋は早臥早起、冬は早臥晩起とは、結局、日のあるうちに活動し、暗くなったら寝るのが一番ということでしょうか。
秋からは早く寝て、冬の季節は一番睡眠をとるべきというのは、冬眠はしないけれど、生物である以上、人間も冬眠モードに入るからそれに合わせるべきということでしょう。
冬は、体の奥深くに陽気をしまい込んで蓄えなければならず、汗をかいて、毛穴から気も一緒に汗とともに出てしまうと、気を蓄える気の元である腎を傷つけることになる。
冬はむやみにサウナに入ったりしてはいけないということなのですね。