手の太陽小腸経
Points of Small Intestine Meridian of Hand-Taiyang, SI19
小指の端に起こり、手の外側を循りて腕に上り、踝(尺骨茎状突起)の中に出で、直ちに上りて臂骨の下廉を循り、肘の内側の両筋の間に出で、上りて臑の外後廉を循り、肩解(肩の後ろの骨縫部)に出で、肩胛を繞り、肩上に交わり、缺盆に入り、心を絡い、咽を循り、膈に下り、胃に抵り、小腸に属す。
其の支れたる者は、缺盆より頸を循りて頬に上り、目の鋭眦(目尻)に至り、却きて耳中に入る。
其の支れたる者は、頬に別れて[出頁](眼窩下方で、顴骨の内連と上の歯茎を包括している)に上り、鼻に抵り、目の内眦に至り、斜めに顴を絡う。
手の太陽の別は名づけて支正と曰う。腕を上ること五寸、内りて少陰に注ぐ。其の別れたる者は、上りて肘に走り、肩髃を絡う。実するは則ち節緩み肘廃る。虚するは則ち疣を生じ、小なる者は指の痂疥の如し。これを別るるところに取るなり。
『霊枢・経脈』参照
記号 | 経穴 | 位置 | 取穴 | 解剖 | 意味 | 主治 | 要穴 | 交会 |
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SI1 | 少沢(しょうたく) 小吉、 小結 |
在手小指之端、去爪甲一分陥者中(甲乙) | 小指尺側、爪甲の角を去ること1分に取る。 | 固有掌側指動静脈 | 少は小さい、沢は潤沢の意味。手太陽の井穴で、心脈が交通している。小腸は、液をつかさどる。経気が心経から最初に侵入する経穴なので、気血が潤沢であるため名付けられた。 | 熱病、中風昏迷、乳汁少、乳瘍、咽喉腫痛、目翳、寒熱往来、頭痛、難聴、耳鳴、肩臂外後側疼痛 配前谷、後谿、陽谷、完骨、崑崙、少海、攅竹治項強急痛 醒脳開竅、清熱通乳 |
井金穴 | |
SI2 | 前谷(ぜんこく) | 在手小指外側、本節前陥者中(甲乙) | 第5中手指節関節の前尺側、手を握ったときに中手指節関節の前、横紋頭、表裏の膚目に取る。 | 背側指動静脈 | 前は第五中手指節関節前方を指し、陥凹は谷のようである。 | 熱病で無汗、寒熱往来、癲癇、耳鳴、目痛、目翳、頭項急痛、頬腫、鼻づまり、咽喉腫痛、産後無乳、臂痛、肘痙攣、手指麻木 清利頭目、通経活絡 |
栄水穴 | |
SI3 | 後谿(こうけい) | 在手小指外側本節後陥者中(甲乙) | 第5中手指節関節の尺側後方、第5中手骨の骨頭部、後縁表裏の膚目に取る。手を握ったときに、穴位は中手指節関節の後の横紋に取る。 | 小指外転筋の起始点後縁 | 後は第五中手指節関節の後方を意味し、拳を握ったとき、尺側横紋の溝が渓のようである。 | 頭項強痛、難聴、目赤目翳、肘臂・手指攣急、熱病、寒熱往来、癲癇、盗汗、目眩、眼瞼部びらん、皮膚病 ※1 清利頭目、清熱截瘧 |
兪木穴、八総穴 | 督脈の宗穴 |
SI4 | 腕骨(わんこつ) | 在手外側腕前、起骨下陥者中(甲乙) | 腕関節の前、三角骨の前縁、表裏の膚目に取る。 | 小指外転筋の外下縁 | 手外側の腕骨(豆状骨)にあるので、名付けられた。 | 頭痛、項強、難聴、耳鳴、目翳、指攣臂痛、黄疸、熱病無汗、寒熱往来、脇痛、頸項顎関節の腫れ、消渇、目流冷泪、四肢痙攣、小児のひきつけ 配陽谷、肩貞、頭竅陰、侠谿治耳鳴 ※1 清利湿熱、通絡止痛 |
原穴 | |
SI5 | 陽谷(ようこく) | 在手外側、腕中、兌骨下陥者中(甲乙) | 三角骨後縁、表裏の膚目で、豆状骨と尺骨茎状突起の間に取る。 | 尺側手根伸筋腱の尺側縁 | 本穴は太陽に属し、手外側の豆状骨と尺骨の間にあり、その形が山谷のようである。 | 頸部顎関節の腫れ、臂外側痛、手腕痛、熱病無汗、頭眩、目赤腫痛、うつ病で精神錯乱し妄言、脇痛項腫、瘡やイボ、痔漏、難聴、耳鳴、歯痛 配太衝、崑崙治目急痛赤腫 清利頭目、通絡止痛 |
経火穴 | |
SI6 | 養老(ようろう) | 在手踝骨上一空、腕後一寸陥者中(甲乙) | 掌を下に向けて、尺骨茎状突起の尖端に取る。掌を胸に当てて肘を屈したとき手を回すので骨が動く。穴位は尺骨茎状突起橈側の骨の合わさったところに取る。(注1) | 尺側手根伸筋腱と小指伸筋腱の間 | 老人を養うという意味。養生鍼灸の常用穴。主治は、難聴、老眼、肩・腕痛などの老年性疾患である。 | 目がはっきり見えない、肩背肘臂痛、急性腰疼痛 清利頭目、通絡止痛 |
郄穴 | |
SI7 | 支正(しせい) | 上腕五寸(霊枢) | 腕関節横紋の上5寸、陽谷と小海の連線上に取る。(注2) | 尺側手根伸筋腱の尺側縁 | 支は絡脈、正は正経を指す。手太陽の絡穴で、ここで分かれて少陰に走る。 | 項強、肘攣、手指痛、熱病、頭痛、目眩、うつ病で精神錯乱、驚きやすい、よく笑いよく忘れる、消渇、瘡やイボ 寧心安神、通絡止痛 |
絡穴 | |
SI8 | 小海(しょうかい) | 在肘内大骨外、去肘端五分陥者中、屈肘乃得之(甲乙) | 肘を屈し、肘頭と上腕骨内側上顆の間に取る。 | 尺側手根屈筋の起始部 | 手太陽の合穴で、小腸経の脈気が、河の水が海に入るようであるから。 | 頬腫、頸項肩臂外後側痛、頭痛目眩、難聴、耳鳴、鬱病、興奮する精神病、癲癇、瘍腫 寧心安神、袪風散熱 |
合土穴 | |
SI9 | 肩貞(けんてい) | 在肩曲胛下、両骨解間、肩髃後陥者中(甲乙) | 肩関節の後下方、上腕を内転して、背部腋下横紋の上1寸に取る。 | 三角筋の後縁で深層は大円筋 | 貞は正の意味。本穴は肩の下にあり、まさに腋横紋の上1寸にあるから。本穴は腕を上げ下げしても、動かずに正しい位置にあることから名付けられた。 | 肩胛痛、手臂痛麻、上肢が挙がらない、缺盆中痛、頸部リンパ結核、耳鳴難聴 配完骨治耳鳴 清利頭目、通絡聡耳 |
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SI10 | 臑兪(じゅゆ) | 在肩臑後大骨下胛上廉陥者中(甲乙) | まっすぐに座り、上腕を下垂して肩貞の直上、肩甲棘下縁に取る。 | 三角筋の後部、深層は棘下筋 | 古代、臑は上腕三角筋のあたりをいい、兪は穴位を指す。 | 肩臂痠痛無力、肩腫、頸部リンパ結核 舒筋活絡、消腫化瘀 |
手太陽、陽維、陽蹻之会 | |
SI11 | 天宗(てんそう) | 在秉風後大骨下陥者中(甲乙) | まっすぐに座り、棘下窩中、肩甲棘下縁と肩甲下角の間で上から3分の1に取る。上へ伸ばした直線上には秉風穴がある。 | 棘下窩の中央、棘下筋中 | 天は上部、宗は本、中心の意味を含む。肩甲下窩正中にあるから。 | 肩胛疼痛、肘臂外後側痛、頬と顎の腫痛、気喘、乳瘍 通経活絡、止痛消腫 |
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SI12 | 秉風(へいふう) | 侠天[穴卯]、在外肩上小髃骨後、拳臂有空(甲乙) | まっすぐに座り、棘上窩中央、天宗の直上で上肢を挙げてできる陥凹に取る。 | 表層は僧帽筋、そのさらに下層に棘上筋 | 秉は掌握する、つかむ、風は風邪を指す。主治は肩痛不可挙である。 | 肩胛疼痛不拳、上肢痠麻 疏風活絡、止咳化痰 |
手陽明、手太陽、手少陽・足少陽之会 | |
SI13 | 曲垣(きょくえん) | 在肩中央、曲胛陥者中、按之動脈応手(甲乙) | 肩甲棘内上端で、臑兪と第2胸椎棘突起の連線の中点に取る。 | 僧帽筋と棘上筋中 | 曲は湾曲、垣は壁の意味。本穴は、肩甲棘内側端にあり、湾曲した壁のようにだから。 | 肩胛拘攣疼痛 舒筋活絡、散風止痛 |
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SI14 | 肩外兪(けんがいゆ) | 在肩胛上廉、去脊三寸陥者中(甲乙) | まっすぐに座り、第1胸椎棘突起下、陶道の外方3寸、肩甲骨内側縁直上に取る。 | 表層は僧帽筋、深層は肩甲拳筋と菱形筋 | 本穴は肩中兪の外側にあるから。 | 肩背痠痛、頸項強急、上肢冷痛 舒筋活絡、散風止痛 |
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SI15 | 肩中兪(けんちゅうゆ) | 在肩胛内廉、去脊二寸陥者中(甲乙) | まっすぐに座り、第七頸椎棘突起下、大椎の外方2寸に取る。 | 表層は僧帽筋、深層は肩甲拳筋 | 肩部、大椎と肩井の中間にあるから。 | 咳嗽、気喘、肩背疼痛、唾血、寒熱、目がはっきり見えない 宣肺解表、活絡止痛 |
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SI16 | 天窓(てんそう) 窗龍 |
在曲頬下、扶突後、動脈応者陥者中(甲乙) | まっすぐに座り、喉頭隆起に水平に胸鎖乳突筋後縁に取る。(注3) | 僧帽筋の前縁、肩甲拳筋の後縁、深層は頭・頚部板状筋 | 天は上部、窓は通気孔を指す。主治は耳、舌、喉など七竅の疾患だから。 | 難聴、耳鳴、咽喉腫痛、頸項強痛、急に声が出なくなる、頬腫痛、甲状腺腫、皮膚過敏掻痒症、うつ病で精神錯乱、中風 配臑会治甲状腺腫 利咽充耳、袪風定志 |
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SI17 | 天容(てんよう) | 在耳曲頬後(甲乙) | まっすぐに座り、下顎角に水平に胸鎖乳突筋の前縁陥凹部に取る。 | 胸鎖乳突筋の上部前縁、顎二腹筋の後腹の下縁部 | 天は上部、容は容貌を指す。本穴は下顎角の後ろにあり、ここから面容に入るから。 | 難聴、耳鳴、咽喉腫痛、咽がつまった感じ、頬腫、甲状腺腫、頭項瘍腫、嘔逆吐沫 配聴会、聴宮、中渚治難聴 聡耳利咽、清熱降逆 |
手少陽の脈気の発 | |
SI18 | 顴髎(けんりょう) 兌骨 |
兌骨(甲乙) | まっすぐに座り、視線は水平に、外眼角直下、頬骨下縁陥凹に取る。 | 咬筋の起始部、大小頬筋中 | 顴とは頬骨のことで、髎は孔。頬骨の下の陥凹にある。 | 顔面神経麻痺、眼瞼のひきつれ、歯痛、頬腫、目赤、目黄、面赤、唇腫 配二間治歯痛、配内関治目赤目黄 風明目、清熱消腫 |
手少陽、手太陽之会 | |
SI19 | 聴宮(ちょうきゅう) 多所聞 |
多所聞(大成) | 耳珠と下顎関節の間、わずかに口を開き現れる陥凹に取る。 | 浅側頭動静脈 | 宮は五音の首位で、耳鳴、難聴の治療の要穴である。 | 難聴、耳鳴、中耳炎、声が出ない、癲癇、歯痛 配聴会、翳風治耳鳴・難聴 寧心定志、聡耳開竅 |
手少陽・足少陽、手太陽之会 |
「経穴概論」教科書小委員会著では
(注1)養老(SI6):尺骨茎状突起の中央の割れ目に取る。
(注2)支正(SI7):手を胸にあてて陽谷より小海に向かって上ること5寸に取る。
(注3)天窓(SI16):喉頭隆起の外方、胸鎖乳突筋の後縁に取る。
穴名 | 共同性 | 特殊性 |
後谿 | 清利頭目 | 可清熱截瘧、用于瘧疾 |
腕骨 | 可通絡止痛、利湿、用于手指肘臂攣痛及黄疸 |