十棗湯(じっそうとう)
種類 | 逐水剤 |
出典 | 傷寒論 |
組成 | 芫花・甘遂・大戟各等量 |
方解 | 甘遂-逐水湿 大戟-臓腑の水湿を清泄 芫花-胸脇伏飲痰癖を消除 大棗-益気護胃、毒性と峻烈性を緩和 |
用法 | 粉末にし1日1回0.5〜1gを大棗10gの煎じ汁で早朝空腹時に服用する |
効能 | 攻逐水飲 |
主治 | 1.懸飲。 咳唾をしたら胸脇に痛みがする、心下痞硬、乾嘔短気、頭痛目眩、あるいは胸背痛による呼吸困難、脈沈弦。 2.実水。 全身腫、特に下半身がひどい、腹脹全満、二便不利等。 |
病機 | 水飲の邪が壅盛で内外・上下に氾溢しており、一般的な化飲滲利の薬物では処理することができないので、峻下の薬物で水飲を攻逐する。 |
方意 | 本方は裏に水飲盛による諸証を治療する。 水停胸脇、気機不暢になるので胸脇が痛くなる。 水飲は肺に逆襲して肺気不利いになり、咳痰短気、胸脇痛、あるいは呼吸困難になる胸背痛を起こす。 飲は陰邪であり、気の流れに連れ心下に止まり、気鬱で心下痞硬になる。 水気犯胃、胃失和降になり、乾嘔を起こす。 陰邪が清陽に逆襲して頭痛目眩を起こす。 脈沈は裏を示し、弦は飲、痛を示す。飲邪が溜まり、胸脇痛なので脈沈弦を表す。 水飲の邪が脘腹に止まって気機不暢になるので水腫腹脹を起こす。 以上の諸証はいずれも水飲盛で、気の流れに連れ、内外氾濫によるものである。 普通の化飲心利の薬では治らないので、峻剤攻逐をすべきである。 本方中の甘遂はよく逐水湿ができ、大戟はよく臓腑の水湿を清泄し、芫花はよく胸脇伏飲と飲痰を除く。 三薬は猛烈で協同して逐水飲、除積滞、消腫満を果たし、臓腑、胸脇の咳水はいずれも追い出される。 しかし、三薬はみな毒性があり、正気を傷つけやすい。 だから、大棗の甘に頼って益気護胃を図り、諸薬の猛烈性と毒性を緩和し、正気を傷つけないようにする。 本方は攻逐水飲の峻剤であり、服用後瀉したが水飲がまだきれいに除かれなかった場合は、量を少し増やし翌日続けて飲む。 きれいに瀉下ことが限度とする。 もし、患者が体虚邪実で攻下しなければならない場合は、本方と健脾補益剤を交替で使う。 あるいは先攻後補、あるいは先補後攻にする。 |