敗毒散(はいどくさん)
種類 | 扶正解表剤 |
出典 | 小児薬証直訣 |
組成 | 柴胡・前胡・川芎・枳穀・羗活・独活・茯苓・桔梗・人参各30g、甘草15g |
方解 | 君-羗活-辛温発散、散寒袪湿 -独活-辛温発散、散寒袪湿 臣-川芎-行血袪風 -柴胡-辛散解肌 佐-枳殻-降気 -桔梗-開肺 -前胡-袪痰 -茯苓-袪湿 佐、使-甘草-諸薬調和、益気和中 -生姜-風寒発散 -薄荷-風寒発散 |
用法 | 粉末にし1回6gを生姜、薄荷少量と水煎服用する。 約1/5量を生姜、薄荷と水煎し分三で服用してもよい |
効能 | 発汗解表、散風袪湿、扶正達邪 |
主治 | 感冒風寒湿邪。 悪寒壮熱、頭項強痛、肢体酸痛、無汗、鼻づまり、声重、咳痰あり、胸膈痞満、苔白膩、脈浮濡、あるいは浮数、重く取ると無力。 |
病機 | 虚弱者が風寒湿邪を感受し、正虚のために袪邪できな状態。 邪正が争うので発熱し、表邪により陽気が鬱阻されるので悪寒、無汗を呈し、経気が阻滞されて頭頂部のこわばり痛みがおきる。 風寒湿邪が肺を犯し、肺気が鬱して宣散できないために鼻閉、嗄声、喀痰、咳嗽が生じ、湿邪は停滞性であるから胸部の痞塞感、肢体のだるい痛みをきたす。 風寒に湿を兼ねるので、舌苔は白膩であり、正気が表に向かうので脈は浮を呈する。 ただし、陽気が不足しているので重按すると無力である。 |
方意 | 体質虚の人は風寒湿邪に犯され、邪、正は肌腠の間に争って、正が虚なので邪を追い出す力はない。 だから、悪寒壮熱で無汗、頭項強痛、肢体酸痛になる。 風寒が肺を犯して、肺気が宣発できず、鼻づまり、声重、咳痰あり、胸膈痞悶、苔白膩、脈浮濡である。 いずれも風寒兼湿の証である。 だから、益気解表、散寒袪湿で治療する。 方中の羗活、独活は君薬であり、辛温発散で全身の風寒湿邪を治療できる。 川芎は行血袪風で、柴胡は辛酸解肌で、ともに臣薬であり、羗活、独活を手伝って袪外邪、止疼痛を果たす。 枳殻は降気で、桔梗は開肺で、前胡は袪痰で、茯苓は袪湿で、ともに佐薬であり、利肺気、除痰湿、止咳嗽をする。 甘草は諸薬を調和して益気和中をも兼ねる。 生姜、薄荷は風寒を発散して、佐使薬である。 そして少量の人参を配伍して気を補う。 正気は充実して邪は追いだされる。 風寒湿はすべて除かれる。 本方はもともと小児用のものである。 子供は元気がまだ充実していないので少量の人参を配伍して元気を補う。 「医方考」では『正気を養って邪毒を敗する。 だから敗毒という』とある。 後世で は、年寄、産後、病後、および平素体質虚の上に風寒湿邪に犯された表寒証に用いるとよく効く。 喩昌は常に本方を用い、時疫初起および外邪陥裏で下痢になる者を治療した。 彼は陥裏の邪を以前に表から出して全癒する過程を逆流挽舟と読んだ。 しかし、本方には辛温香燥のものが多いので、もし、暑温、湿熱が腸に入って下痢になったら絶対使わない。 風寒湿邪、寒熱無汗の場合も適応しない。 |