理中丸(りちゅうがん)(理中湯、人参湯)
種類 | 温中散寒剤 |
出典 | 傷寒論 |
組成 | 人参6g、乾姜5g、炙甘草6g、白朮9g |
メモ | 理中は環境忍術官(理中、乾姜人朮甘) |
方解 | 君-乾姜-辛熱、温中、除裏寒 臣-人参-甘微温、大補元気 佐使-白朮-健脾燥湿 -炙甘草-益気和中 中焦の寒は辛熱によって去り、中焦の虚は甘温で復元される |
用法 | 蜜丸にして1日2〜3回、毎回9g。あるいは原方の比率にしたがい、煎じて服用。 |
効能 | 温中袪寒、補気健脾 |
主治 | 1.中焦虚寒、自利不渇、嘔吐腹痛、食欲不振および霍乱 2.陽虚失血 3.小児慢驚、病後によく涎をたらす、および中焦虚寒による胸痺等。 |
病機 | 脾胃の裏寒。中焦脾胃の陽虚で内寒が生じ、運化不足で昇降が失調すると食欲不振となり、清陽気が下流して泥状〜水様便を呈し、濁陰が下降せず上逆するために嘔吐する。 虚寒で気血が行らないので鈍痛が生じ、温めたり押さえると気血が推動するので痛みが軽減する。 陽気の推動が無力で、陽気が四末に布達しないので四肢が冷える。 口渇無、舌質淡白胖大、苔白滑、脈沈遅で無力は虚寒を表す。寒邪直中は外束の実寒だが、陽虚の場合衛気が衰弱しているために特に寒邪を感受しやすく、外寒を感受することにより陽気がさらに損傷されることになる。 寒邪が脾胃の陽気を凝滞させ、運化と昇降が失調するので、急激かつ持続的な腹痛が生じ、腹中が冷え、嘔吐、腹鳴、下痢か便秘を呈し、寒邪が陽気の布達を阻むので四肢が冷える。 舌質淡〜青、苔白滑、脈沈緊で遅は、裏の実寒で陽気が阻滞されて血流が停滞し水湿が停積していることを表す。 陽虚で気も不足し、気が血を統摂できなくなると血が脈管外に溢出し、鼻出血、血便、不正性器出血などが発生。 顔色が白い、息切れ、元気がない、脈が細あるいは虚大無力などは、陽虚に伴う気血不足を示す。 |
方意 | 脾は運化を主とし、清陽を挙げる。 胃は受納を主とし、濁陰を下げる。 中虚有寒であれば、昇降が失常になり、吐利腹痛、食欲不振を起こす。 治療は温中で寒を除き、補気で健脾を果たし、運化と昇降を助け諸症は治る。 本方は辛熱の乾姜を君とし、中焦脾胃を温め、裏寒を除く。人参は大補元気で、運化と昇降を助ける臣薬である。 白朮は健脾燥湿で、炙甘草は益気和中で、共に佐、使である。 四薬は協力して中焦の寒は辛熱によって去っていく。 中焦の虚は甘温を得て復元され、清陽が挙げられ濁陰は下げられ、運化が健全になり、中焦の病は治る。 だから、本方は「理中」と称する。 すべての中気虚欠、暴受風寒、霍乱吐利、不欲飲水、あるいは飲食不節の脾胃袪寒の証も本方で治療できる。 陽虚失血は吐衄でも、便血でも、いずれも顔色[白光]白、気短神疲、脈細あるいは虚大少力が見られる。 これは陽気虚弱、血のコントロールを失い、経にはずれて妄行するため、本方で治療できる。 乾姜を炮姜に変え、さらに黄耆、当帰、阿膠等を加えたらもっと良い効果が得られる。 小児慢驚は、普通先天不足、後天失調、あるいは病中に寒凉のものを過量に服用する、あるいは大病後に補陽不足、不善により、脾胃陽気が傷つけられる等によるものである。 もし、形体羸痩、手足不温、嘔吐泄瀉、神疲食少、舌淡苔白、脈細遅あるいは沈細緩弱の者は、中焦袪寒に属するので本方で治療できる。 前後の涎は、脾気袪寒、摂津不能、津が口から溢れるため、本方を丸剤にして服用すると徐々に効果が得られる。 胸痺は上焦の陽気不足、陰邪逆襲のため、胸中の気が痺され不暢になる。 もし、心中痞堅、気結在胸、胸満、脇下に気が心に逆襲する等の証があれば、中焦の陽気虚の上に痰飲水寒の気に犯された証である。 本方を使い、温中袪寒、益気健脾を果たし、中焦の気が旺盛になれば、中焦の気も充実し、逆気が抑制され、胸痺は治る。 本方を総合的に見ると、多種の病を治すが、ポイントは中焦袪寒である。 だから、異病同治ができる。 |