小建中湯(しょうけんちゅうとう)
種類 | 温中散寒剤 |
出典 | 傷寒論 |
組成 | 飴糖30g、白芍18g、桂枝9g、炙甘草6g、生姜9g、大棗4g |
メモ | ショーケン、伊東で舎監消し大凶(小建、飴糖芍甘桂枝大姜) 虚労腹痛 肝気横逆 |
方解 | 君-飴糖-甘温湿潤、益脾気、温補中焦 臣-白芍-益陰血 -桂枝-温陽気 佐-炙甘草-甘温益気 -生姜-温胃 -大棗-補脾 辛甘を聚として、大量の芍薬を配伍するので、酸甘を合わせて陰に変わる意味がある。だから中陽虚で、営陰も不足の証に適応する。 陰陽両補だが、温陽を主とする |
用法 | 飴糖以外を水煎して滓を去り、飴糖を溶かして分二で温服する |
効能 | 温中補虚、和裏緩急 |
主治 | 虚労裏急。 腹中がときどき痛む、温めるあるいは押すと痛みが減り、舌淡苔白、脈細弦緩、あるいは心中悸動、虚煩不寧、面色無華、あるいは四肢痠楚、咽乾口燥。 |
病機 | 中焦虚寒で営衛気血が不足し、脾虚に乗じて肝気が横逆する状態。 脾胃は後天の本で気血営衛を生化する源であり、中焦虚寒で運化が低下すると気血営衛が不足する。 肝血が不足するために肝気が失調し、肝気が脾虚に乗じて横逆するので、ときにひきつるような腹痛が乗じる。 虚寒の疼痛であるから、温めたり手で押さえると軽減する。 営血不足で心神が安定しないと動悸、焦燥感があらわれ、肺を濡養できないと口や咽の乾燥感が生じる。 脾は四肢を主り、脾気が不足すると四肢がだるく痛み、脾陰が不足すると手足のほてりがみられる。 顔色に艶がない、舌質淡苔白、脈細で緩は気血不足と虚寒を表し、脈弦は肝乗を示す。 |
方意 | 証は虚労裏急である。症状は腹痛、温めるか押すと痛みが減る。 それは労傷内損、中気虚寒、肝来乗脾のためである。 脾は生化の源であり、精を肺に送り、四肢肌肉を主とする。 脾虚気寒であれば、生化の源は不健、気血両乏し、営衛失調になる。 だから四肢痠楚、手足煩熱、咽乾口燥を現す。 心は脾の母であり、血脈を主として神を蔵し、その華が面にある。 もし、脾虚が心に影響したら、心中悸動、虚煩不寧、面色無華を現す。 治療は補脾を主として、温健中陽をし、兼ねて養陰をし、和裏緩急で止痛を果たす。 本方は甘温湿潤の飴糖を君薬とし、益脾気、養脾陰、温補中焦で、肝の急を緩和し、肺の燥を潤する。 桂枝は温陽気で、芍薬は益陰血で、共に臣薬である。 炙甘草は甘温益気で、飴糖、桂枝を手伝って、益気温中を果たし、芍薬の酸甘化陰と合わせて益肝滋脾を果たす佐薬である。 生姜は温胃で、大棗は補脾で協同して中焦生発の気を挙げて津液を運行して営衛を調和するが、やはり佐薬である。 六薬は配伍して辛甘化陽、酸甘化陰で、温中補虚、和裏緩急の効を果たす。 中気が健全になり、生化の源が充実され、五臓を養い、裏急腹痛、手足煩熱、心悸虚煩は治る。 臨床では方中の各薬の配伍の比率を注意しなければならない。 |
参考 | 『傷寒明理論』には「脾は土なり、中央に応じ、四臓の中に処り、中州たり、中焦を治め、営衛を生育し、津液を通行す。一たび不調有らば、すなわち営衛は育む所を失い、津液は行る所を失う、必ずこの湯をもって臓を温建す。これをもって建中と名づくなり。」とある。 |