炙甘草湯(しゃかんぞうとう)
種類 | 気陰双補剤 |
出典 | 傷寒論 |
組成 | 炙甘草12g、生姜9g、人参6g、生地黄30g、桂枝9g、阿膠6g、麦門冬10g、麻子仁10g、大棗5〜10枚 |
方解 | 炙甘草-益気、補心脾 人参-益気、補心脾 大棗-益気、補心脾 乾地黄-甘潤滋陰、養心補血、潤肺生津 麦門冬-甘潤滋陰、養心補血、潤肺生津 阿膠-甘潤滋陰、養心補血、潤肺生津 麻子仁-甘潤滋陰、養心補血、潤肺生津 生姜-辛温、通陽復脈、気血流通、脈道通利 桂枝-辛温、通陽復脈、気血流通、脈道通利 清酒-辛温、通陽復脈、気血流通、脈道通利 |
用法 | 水煎し薬汁に阿膠を溶かし清酒10mlを入れて1日3回飲む |
効能 | 益気滋陰、補血複脈 |
主治 | 1.気虚血弱。 脈結あるいは代、心動悸、舌光淡、少津。 2.虚労肺痿。 乾咳無痰、あるいは痰少、痰に血糸がある。虚煩、寝付き悪い、自汗あるいは寝汗、咽乾舌燥、大便出にくい、あるいは時に虚熱、脈虚数。 |
病機 | 陰液、陽気がともに衰少した病態 |
方意 | 本方は『傷寒論』においては、「脈結代、心動悸」の証を治す。 結代脈は『頻湖脈学』というように、「結脈は往来緩にして、時に一止し、復(ま)た来る」、「代脈は動きて中に止め、自ら戻ることあたわず、よりて復た動く」。 本証は陽虚で、脈気を宣通できず、陰虚で、心血を養わないためである。 心煩不眠、舌光少津は陰血不足によるものである。 虚労乾咳、痰に血液がある、自汗、寝汗、咽乾舌燥等はいずれも陰液不足、肺失潤養、内燥が肺楽を損傷して、あるいは陰虚生熱によるものである。 方中は炙甘草、人参、大棗で益気を通して心脾を補う。 乾地黄、麦門冬、阿膠、麻子仁は甘潤滋陰、養心補血、潤肺生津を果たす。 生姜、桂枝、清酒は性味が辛温で、通用復脈の効を持ち、益気滋陰薬と配伍して、温でありながら、燥ではない、気血流通、脈道通利を果たす。 合わせて益気復脈、滋陰補血の効を果たす。 気陰両傷の虚労乾咳等の省に本方を使用するのは、益気滋陰を通して補肺を図る。 しかし、陰傷肺燥の比較的に重い病症に対しては方中の生姜、桂枝、清酒の量を減らし、あるいは使わない。 温薬はあくまでも耗灼陰液の恐れがある。 だから、慎重に使うべきである。 |