大陥胸湯(だいかんきょうとう)
種類 | 寒下剤 |
出典 | 傷寒論 |
組成 | 大黄10g、芒硝10g、甘遂1g(沖服) |
方解 | 甘遂-逐水飲、泄熱散結 大黄-蕩滌腸胃、瀉結泄熱、潤燥軟堅 芒硝-蕩滌腸胃、瀉結泄熱、潤燥軟堅 |
用法 | 大黄を水煎して滓を除き、芒硝を加えて1〜2回沸騰させ、甘遂末を加え、分二で温服する。爽快に下痢すれば中止する。 |
効能 | 瀉熱逐水 |
主治 | 結胸証。 心下から少腹まで堅くて痛い、大便秘結、日晡時にやや潮熱があり、あるいは短気躁煩、舌燥渇、脈沈緊押したら有力感がする。 |
病機 | 風寒表邪が化熱して裏に入り、少陽三焦で気機を阻滞するとともに水湿を停滞させ、熱と水湿飲邪が結びついて心下胸脇で停結し、陽明の裏にも影響を及ぼして腑実熱血を伴う状態であり、これを「水熱結胸」と称する。 有形の水湿陰邪と熱邪が心下胸脇で結し、停積して気機を阻滞しているために心窩部が硬く張って痛み圧痛と抵抗があり、不実熱結を伴うときは上腹から下腹にまで症状が拡大する。 気機阻滞が胸腸に及ぶと呼吸促迫が、陽明腑気に及ぶと便秘が生じる。 裏熱による煩躁、発熱や陽明熱結の日?潮熱が見られるが、水湿が壅遏しているために甚だしい熱は現れない。 三焦が阻滞されて水津が布散できないので汗が出ず、口渇や舌苔の乾燥がある。 壅滞した邪熱が津液を上蒸すると、首から上の頭汗だけが生じる。 舌質紅、舌苔黄は裏熱を、脈沈で有力は裏実・水飲を、脈緊は邪実、疼痛を示している。 |
方意 | 結胸証は邪熱と内蘊の水飲を結合して胸に積滞することによるものである。 水熱結合で気が不通になり、軽い場合は心下の堅くて痛いが、ひどい場合は心下から少腹までが堅くて痛い、日晡時にやや潮熱がある。 また短気煩躁がみられる。 邪熱が胸にあって水飲と結合したので津液が不暢になり、舌燥口渇、腸燥便秘がみられる。 脈沈緊かつ有力ということは邪が裏に盛んなるが、正が虚ではない証だから瀉熱逐水法で速やかに実を瀉す。 方中の甘遂は逐水飲ができ、泄熱散結もできる。 大黄、芒硝は蕩滌腸胃、瀉結泄熱で、潤燥軟堅もできる。 甘遂と協力して水飲を下し実熱を瀉して胸にある水熱が大便から追い出され、諸証は自然と治る。 本方の力は専一で効果が大きく、瀉熱逐水飲散結の猛烈剤である。 病が治ったら即時止め、正を傷つけないようにする。 平素虚弱や病後の者には本方の使用は禁物である。 本方と大承気湯は寒下の猛烈剤であり、共に大黄、芒硝で瀉熱攻下するが二方の主治証の病因、病所は違う。 だから、配伍と煎じる法も違う。 大承気湯の病因は腸に燥屎があるが、大陥胸湯の病因は心下の水熱である。 |