黒錫丹(こくしゃくたん)
種類 | 回陽救逆剤 |
出典 | 和剤局方 |
組成 | 黒錫・硫黄各60g、沈香・木香・小茴香・陽起石・胡芦巴・補骨脂・肉豆蔲・川楝子・附子各30g、肉桂15g |
方解 | 君-黒錫-質重、甘寒、鎮摂浮陽、降逆平喘 -硫黄-酸熱、温補命火、暖腎消寒 臣-附子-温陽助陽、引火帰原 -桂皮-温陽助陽、引火帰原 -陽起石-温命門、除冷気 -補骨脂-温命門、除冷気 -葫芦巴-温命門、除冷気 佐-茴香-温中調気、降逆除痰 -沈香-温中調気、降逆除痰 -肉豆蔲-温中調気、降逆除痰 使-川楝子-苦寒、諸薬監理統制、疏肝理気 |
用法 | 成薬の丸剤5gを塩湯で服用する。小児は2〜3g、救急には9g |
効能 | 温壮下元、鎮納浮陽 |
主治 | 1.真陽不足、腎不納気、濁陰上泛、上盛下虚、痰壅胸中、上気喘息、四肢厥逆、冷汗不止、舌痰苔白、脈沈微。 2.奔豚、気が少腹から胸部に揚がる、胸脇脘腹の脹痛、あるいは寒疝腹痛、腸鳴滑泄、あるいは男子の陽萎精冷、女子の血海虚寒、生理不順、帯下清稀、不妊症等。 |
病機 | いずれも腎陽虚、陰寒内盛による病変であり元気がない、寒がる、四肢の冷え、舌質は淡、舌苔は白滑、脈は沈微など陽虚の症候がみられる |
方解 | 方中の黒錫は質重、甘寒で、鎮摂浮陽、降逆平喘を果たす。 硫黄は性熱味酸で、温補命火、暖腎消寒を果たす。 二薬は相須して、水火併補、標本顕顧となり、共に君薬である。 さらに附子、桂皮は温腎助陽、引火帰原を果たし、虚陽が腎中に戻るようにさせる。 陽起石、補骨脂、葫芦巴は命門を温め冷気を除き、下への虚陽を受け、共に臣薬である。 茴香、沈香、肉豆蔲は佐薬として温中調気、降逆除痰を果たし、兼ねて腎を温める。 しかし、諸薬の温燥が強過ぎる恐れがあるので苦寒の川楝子で諸薬を監理、統制すると同時に、疏利肝気の効を果たす。 このように配伍して真陽を充実させ、下元を温め、喘息を抑え、血逆は治り、冷汗を止め気は腎に戻る。 奔豚、寒疝、精冷、血海虚寒等の証は、いずれも下元虚冷によるもので本方で治療できる。 |