麻黄杏仁甘草石膏湯(麻杏甘石湯・麻杏石甘湯)(まおうきょうにんかんぞうせっこうとう)
種類 | 辛涼解表剤 |
出典 | 傷寒論 |
組成 | 麻黄6g、杏仁9g、石膏18g、炙甘草6g |
方解 | 君-麻黄-温、宣肺 臣-石膏-辛甘大寒、宣肺清肺 佐-杏仁-肺気を下げる 使-炙甘草-益気和中、生津止渇、寒温宣降を調和 |
用法 | 水煎し分二で温服する |
効能 | 辛涼宣泄、清肺平喘 |
主治 | 外感風邪。 身体熱不解、咳逆気急、鼻痛、口渇、有汗あるいは無汗、苔薄白あるいは黄、脈滑数。 |
病機 | 風寒が化熱入肺するか風熱が襲肺し、壅熱が肺気を上逆させている状態。 肺中壅熱が肺気の粛降を阻害して上逆させ、咳嗽、呼吸促迫、呼吸困難、尾翼呼吸などを引き起こす。 肺熱が盛んなために発熱が持続するが、壅熱が津液を蒸迫することにより汗が出ると、内熱がある程度外泄するので体表の熱感が少なくなり、肺気が阻滞されて閉塞すると無汗になり、熱感も強くなる。 熱邪が津液を消耗すると、口渇が生じて水分を欲する。 脈滑数は熱盛を示し、肺熱が鬱しているときは舌苔は薄白であるが、熱盛になると黄苔を呈する。 |
方意 | 本方の主治証は風熱襲肺、あるいは風寒鬱の化熱、肺に蓄積して形成したものである。 肺に熱が盛んになり気逆で津を傷つける。 だから、有汗身熱、咳逆気急、鼻翼煽動、口渇喜飲、脈滑数である。 このとき急いで清泄肺熱をすると自然に熱清気平になり、喘、渇も治る。 だから方に麻黄を君とし、宣肺で邪熱を除き「火鬱が発する」の意義である。 しかし、その性は温なので辛甘、大寒の石膏を配伍して臣薬とし、量は麻黄の倍にする。 宣肺で熱を助けず、清肺で邪を残さない。 肺気粛降が正常になり、喘急が治る。 これは相制の法である。 杏仁は肺気を下げるが佐薬で、麻黄、石膏を手伝って清肺平喘を果たす。 炙甘草は益気和中ができるが、また石膏と共同して生津止渇ができ、寒温宣降を調和する。 だから、佐、使薬である。 薬が四味だけであるが配伍が厳密で量もよく配慮されている。 特に肺熱の治療に、麻黄と石膏の配伍は非常に配伍変通の妙であり、清泄肺熱の効果は確かである。 本方は傷寒論のもので、もともとは太陽病の治療であるが、適応症は発汗があり治らないうちに風寒が裏に入り、熱に変わって、出汗喘息の者である。 後世は風寒化熱に用いる、あるいは風熱により、肺で火熱盛、身熱喘急、口渇脈数、有汗、無汗に対して本方を加減して治療する。 肺中熱盛、蒸迫津液になり汗が出る。 もし、津液が大いに傷つけられると汗が少なくなり、無汗になる。 このとき、石膏の量を増やすべき、あるいは炙桑皮、芦根、知母等を加える。 もし、無汗で悪寒があったら邪がすでに裏に入り熱に変わったが表の風寒はまだ治らない。 あるいは風温、風寒が混雑によるものである。適当に解表の薬を加えるべきである。 たとえば、荊芥、薄荷、淡豆豉、牛蒡子等である。 主に清泄肺熱と同時に被毛を開き、肺熱が泄されて治る。 だから、臨床で本方を使用するときは出汗喘急に限らず、よく無汗の原因を調べ、あるいは清熱生津のものを加え、あるいは辛散解表のものを加えると自然に薬が証に合う効果を現す。 |